私の内科医としてのキャリアのスタートは、血友病の患者さんの診療でした。当時は、薬害エイズが騒がれだしたころでした。血友病は伴性劣性遺伝疾患として知られています。母親の遺伝子によって男子に発現します(が、半数くらいは遺伝子突然変異で患者さんのいない家系に突然患児が生まれるそうです)。生まれつきの疾患を持った子供とその母親の苦悩、血液凝固因子欠乏による筋肉や関節内出血の激痛…その痛みから彼らを救った血液製剤に混入していたHIVウィルス…。その怒りと絶望と後悔…。出会った患者さんからは本当にたくさんのことを学びました。
私の中で、大きな原体験となったのは、ある有名アナウンサーの方の死でした。医療者なら誰でもが、もう手の施しようがないと考える状態だったのに手術が行われ、ほどなくして他界。後にご遺族は、『回復する希望が持てるという話だったから手術を受けたのに、、。』という内容を話されていました。
これには大変驚きました。
あの状態で回復する見込みは限りなくゼロに近い…まさかその認識がなかった??
これは推測になりますが、ご家族は医師の説明を正確に把握していなくて、医師はわかりやすい言葉で説明していなくて、双方に誤解が生じてしまったためではないか、と。
だとしたら、なんて残酷な話でしょう…!
この一件で、私は、“医者の言葉には通訳が必要だ”“医者は専門用語は極力使わず、使ったとしても、平易な言葉に置き換えてちゃんと相手が理解しているか、を確認しなくてはならない”と痛感し、自分は患者さんへの説明は常にそれを意識してきました。
私が診療をする中で、患者さんに言いたくない言葉があります。
『だから言ったじゃないですか。』です。
この言葉が出てくるシーンは、例えばこんな時です。
患者さんの腎臓の検査値が悪くなりつつあって、血圧コントロールや食事内容など、ちゃんとしないと、最悪腎臓透析になりますよ、透析になったらこれこれこういう風に大変ですよ、などと口を酸っぱくして言っても変えようとはせず、悪化の一途をたどり、ある日、急に具合が悪くなって大きな病院を受診すると、腎臓が機能していません、と言われ、緊急透析となり、その後も腎臓は回復せず、透析が必要になってしまう。
退院して、経過報告に見えた時、透析導入になったことを告げ、『あの時ちゃんと言うことを聞いておけばよかった。』と悔やむ相手に、
『だから言ったじゃないですか。』
↑この言葉を言う医者はきっとたくさんいます。
でも、私はそれを言いたくない。だから、言わずに済むように、あの手この手で、色んな言い方で、時には大袈裟に“このままではダメ!”を伝える努力をします。
相手にとってはまだ起きていない未来で、身の回りにそういう状態の人がいなければ想像も出来ないから、現実味がないのでしょう。でも私は、透析患者さんの苦悩や後悔や心の傷みをたくさん知っている。だから何としてでも気づいて踏みとどまって欲しい。
医者の難解な言葉は使わず、わかりやすい言葉で伝える。
これも大事なポリシー。
そして、最近我が身に起こって、本気で取り組むべき相手が浮上。
それは…糖質過多の恐ろしさ
先に結論から話すと、私は糖尿病予備軍に片足突っ込んでいます。
自分で言うのもなんですが、見た目は若いし、血圧も高くないし、肥満でもない。HDL(善玉)コレステロールなんて100くらいある(正常値:40~80くらい)。
でも、数年前から、空腹時血糖値とHbA1c(約1ケ月間の平均血糖値)が徐々に上がってきていて、ちょっと気になっていました。
そんな折、フリースタイルリブレというアイテムを知り、Amazonで入手できたので、自分の血糖値の動きを把握しようと、装着してみました。
基本的に糖質は気にしてあまり口にしない食生活だったので、相変わらず空腹時血糖は高めでしたが、こんなものか、って思ってました。
ある日、東京に行くので朝早く起きたため、朝食代わりに小さな玄米おにぎりを車内で食べた20分後。数値が想像以上に跳ね上がったのを見て(270くらい)、びっくり!
自分でもそれが何を意味するのか、何によるのか、自分に何が起こっているのか理解ができずにいました。あれこれ考えていると、封印していた“不都合な真実”の記憶が次々に浮かんできました。
近所に糖尿病専門の先生の勤務するクリニックがあり、受診。
この時の検査値などは、データ集、にでもして、別で記録しておこうと思います☝
それから私は、自分の身体と真剣に向き合い始めました。
ケトジェニックダイエットやオーソモレキュラー療法を学び、実践する日々。
冬になると毎年しもやけに悩まされていたことも、
血管年齢が実年齢よりも高かったことも、
それらが血糖コントロールや血流と深く関わっていたことに、ようやく気づいたのです。
まさかこの私が…(><)!!
でも、ここで片足を糖尿病に突っ込んでいる、その足をそのままにするわけにはいかない!
そして思った。
「これは私だけの問題ではない」。
私だって、たまたまリブレ2を装着したからわかったのであって、それまでの私の数年間がそうであったように、特に問題視されないまま経過して、糖尿病が極めて疑わしいくらいに進行した時点で<発覚>するのだ…!
その時ではもう遅いかも知れない。
遅くはなくても、もっと早くに気づけていれば、と後悔するかも知れない。
多くの人が、知らないうちに“
けれど、その多くが、まだ病名がついていないという理由で安心している。
健康診断ではスルーされ、医者に行っても「様子を見ましょう」と返される。
でも本当は、その“様子見”こそが、命取りになりかねない。
この段階で口を酸っぱくして言ってくれる医者が必要ではないか??!!
だから私は、決意しました。
私がなりましょう!
私も日々、糖化の進行と闘っています。抗っています。
ええ、私は往生際が悪く、しつこいんですよ(苦笑)。
“病気”になる前の“未病”の段階で、体の声を聞き取り、
まだ間に合う今だからこそ、生活を整え、進行を防ぐ。
そんな未来型の予防医療を届ける場をつくろう!と。
長くなりましたが、それが、YOKO CLINICに込めた私の想いなのです。